Our World in Data 日本語解説

光の値段は300年でほぼ消えた――照明コストが99.9%以上下がった歴史

公開日 2026-06-18

要点まとめ

  • 照明の実質価格は長期的に急落した。
  • 14世紀には100万ルーメン時間あたり約3万4000ポンドだった。
  • 2023年には同量の光が2.15ポンドで得られる。
  • これは約1万6000倍の価格低下に相当する。
  • 19〜20世紀の照明技術・燃料・インフラ・制度の革新が大きな要因だった。

この記事でわかること

  • 光がどれほど安くなったのか
  • 数百年単位で見た照明コストの変化
  • 技術革新が生活コストをどう変えたのか
  • 現代の「当たり前」がどれほど歴史的に特別なのか

本文

1. 結論

照明の価格は過去数百年で劇的に低下した。

Our World in Dataが紹介する歴史データによると、100万ルーメン時間あたりの照明コストは、14世紀には約3万4000ポンド(2000年価格換算)だったが、2023年には2.15ポンドまで下がった。

これは約1万6000分の1という驚異的な低下であり、実質的には99.9%以上の価格下落を意味する。

2. 背景と問題

照明は現代社会では当然の存在である。

夜になればスイッチを押すだけで明かりが得られるため、その価値やコストを意識する機会はほとんどない。

しかし歴史を振り返ると、十分な明かりを得ることは非常に高価だった。

今回のデータは、イギリスにおける長期的な照明コストの推移を示している。比較を可能にするため、すべての価格はインフレ調整され、2000年時点の価格に換算されている。

そのため、単なる名目価格ではなく、「実際にどれだけの負担で光を得られたか」を時代を超えて比較できる。

3. データからわかること

グラフには1300年から2023年までの照明価格の長期推移が示されている。

中世の照明は極めて高価だった

14世紀初頭、100万ルーメン時間の光を得るには約3万4000ポンドが必要だった。

グラフを見ると、1300年代から1700年代まで価格は非常に高い水準にあり、数万ポンド規模で推移していた。

1700年頃でも依然として高額

1700年代になっても100万ルーメン時間あたりの価格は約1万〜1万5000ポンド程度だった。

つまり近代初期になっても、照明は依然として高価な資源だったことがわかる。

19世紀以降に急激な変化

グラフでは19世紀以降に価格低下が加速している。

長く続いていた高コスト構造が崩れ、照明価格は急角度で下落していく。

現代ではほぼ無視できるコストに

2023年の価格は2.15ポンドだった。

14世紀の約3万4000ポンドと比較すると、およそ1万6000倍も安くなっている。

グラフ全体を見ると、人類史の大部分で高価だった光が、近代以降に急速に普及可能な資源へ変化したことがわかる。

4. なぜそうなるのか

記事では、この大幅な価格低下の背景として次の要素を挙げている。

  • 照明器具の革新
  • 燃料の革新
  • インフラの発展
  • 制度の発展

特に19世紀から20世紀にかけての技術革新が大きな役割を果たした。

重要なのは、単一の発明によって価格が下がったわけではない点である。

照明装置そのものだけでなく、燃料供給や社会インフラ、制度的な仕組みも含めた広範な変化が積み重なり、長期的な価格低下を実現したと説明されている。

5. 日本人への示唆

このデータが示しているのは、単に電球が安くなったという話ではない。

人々が利用できる「光」の量そのものが劇的に増えたという事実である。

記事では比較例として、100ワットの白熱電球を24時間点灯すると約4万ルーメン時間の光を生み出せると説明している。

その計算では、100万ルーメン時間を得るには100ワット電球を約26日間連続で点灯し続ければよい。

一方で、同じ量の光をろうそくで実現する場合には、120本のろうそくを同時に燃やし続ける必要がある。

この比較から見えてくるのは、現代人が手にしている照明環境が歴史的には極めて特別なものであるという点だ。

現在は夜間に明かりを得ることを当然視しているが、長い歴史の中ではそれ自体が非常に高価で希少なサービスだった。

まとめ

  • 照明価格は数百年にわたり大幅に低下した。
  • 14世紀には100万ルーメン時間あたり約3万4000ポンドだった。
  • 2023年には同じ量の光が2.15ポンドで得られる。
  • 価格は約1万6000倍低下し、99.9%以上の下落となった。
  • この変化は19〜20世紀の照明技術、燃料、インフラ、制度の革新によって実現した。
  • 現代人が当然と思っている夜間照明は、歴史的に見れば非常に安価で豊富な資源になっている。

元記事 https://ourworldindata.org/data-insights/the-price-of-lighting-has-dropped-over-999-since-1700