Our World in Data 日本語解説

電気自動車が普及しても、世界のバイオ燃料生産は20年で7倍に拡大していた

公開日 2026-05-10

要点まとめ

  • 世界の液体バイオ燃料生産量は、この20年間で約7倍に増加した
  • 生産拡大を主導しているのはアメリカ、ブラジル、EUで、世界全体の80%以上を占める
  • バイオ燃料の90%以上は、トウモロコシやサトウキビなどの食用作物から作られている
  • 世界のバイオ燃料の99%は道路輸送向けで、航空分野での利用は1%未満
  • 電気自動車の普及が進む中でも、各国の政策支援によってバイオ燃料需要は維持されている

この記事でわかること

  • なぜバイオ燃料生産が今も拡大しているのか
  • 世界のどの国がバイオ燃料を支配しているのか
  • どんな作物が燃料に変わっているのか
  • 電気自動車時代でもバイオ燃料が残る理由
  • 輸送・航空・エネルギー政策との関係

本文

1. 結論

世界では電気自動車(EV)が急速に普及しているが、液体バイオ燃料の生産量は減っていない。

むしろ、過去20年間で世界のバイオ燃料生産量は約7倍に拡大した。

その背景には、アメリカ、ブラジル、EUによる強力な政策支援がある。バイオ燃料は現在も道路輸送向け燃料として大量に利用されており、航空分野でも将来的な脱炭素手段として期待されている。

2. 背景と問題

2000年代初頭、低炭素な輸送手段として注目されていたのは、現在のEVではなくバイオ燃料だった。

石油の代わりに、トウモロコシやサトウキビなどの作物を育て、それを燃料へ変換するという考え方である。

Our World in Dataによると、現在でも世界のバイオ燃料生産量は増え続けている。

特にアメリカでは、2005年に「Renewable Fuel Standard」が導入され、輸送用燃料の一定割合をバイオ燃料にすることが義務化された。2007年には制度がさらに拡大され、生産量が急増した。

ブラジルでも、石油依存を減らす目的でサトウキビ由来のバイオエタノール生産が拡大した。ブラジルは1990年代初頭の時点ですでに大規模生産を行っていたが、2000年代にさらに増産が進んだ。

3. データからわかること

世界の液体バイオ燃料生産量は、2000年代初頭から急増している。

Our World in Dataのグラフでは、2000年代から2024年にかけて、生産量が約7倍に増加していることが示されている。

生産は一部地域に極端に集中している。

最大の生産国はアメリカで、次いでブラジル、EU、インドネシア、中国が続く。この5地域だけで、世界全体の80%以上を生産している。

原料の内訳にも特徴がある。

2024年時点の推計では、世界の液体バイオ燃料の原料構成は以下のようになっている。

  • トウモロコシ:35%
  • サトウキビ:21%
  • 油糧作物合計:26%
  • パーム油:11%
  • 大豆油:11%
  • 菜種油:4%
  • その他作物:6%
  • 使用済み食用油:6%
  • 動物性脂肪:5%
  • その他廃棄物・残渣:1%

つまり、世界のバイオ燃料の90%以上は、廃油や廃棄物ではなく、食用作物から生産されている。

用途を見ると、バイオ燃料のほぼすべてが道路輸送向けである。

国際エネルギー機関(IEA)の推計では、液体バイオ燃料の約99%が道路輸送に使用されている。航空向けは1%未満だった。

さらに、航空燃料全体の中で見ても、バイオ燃料の割合はわずか0.4%に過ぎない。

一方で、バイオ燃料全体としては、世界の輸送エネルギー需要の約4%を担っている。

4. なぜそうなるのか

バイオ燃料生産が拡大し続けている最大の理由は、政策が継続しているためである。

Our World in Dataは、生産が特定地域に集中している理由として、各国政府の支援政策を挙げている。

特にアメリカ、ブラジル、EUでは、エネルギー安全保障や輸送分野の脱炭素を目的として、長期間にわたりバイオ燃料政策が維持されてきた。

記事では、「EVが低炭素輸送の主役になった現在でも、バイオ燃料生産は過去最大水準にあり、この傾向は今後も続くと考えられる」と説明している。

また、航空分野では電化が難しいため、バイオ燃料が将来的な脱炭素手段として期待されている。

ただし現時点では、航空用途に回されている量は極めて少ない。

Our World in Dataは別記事で、「世界の航空需要をすべてバイオ燃料で賄うには、現在の世界のバイオ燃料生産量を3倍以上に増やし、その全量を航空専用にする必要がある」と指摘している。

5. 日本人への示唆

この記事が示しているのは、「EVが伸びればバイオ燃料は不要になる」という単純な構図ではない。

現実には、各国政府の政策、農業、エネルギー安全保障、航空燃料需要が複雑に絡み合い、バイオ燃料市場は拡大を続けている。

また、世界のバイオ燃料の大半が食用作物由来である点は重要である。

エネルギー政策は、農地利用や食料生産とも直結している。

Our World in Dataは別の記事で、現在バイオ燃料生産に使われている土地は「ポーランド1国分」に相当すると説明している。

さらに、その土地に太陽光発電を設置した場合、現在のバイオ燃料よりはるかに多くのエネルギーを得られる可能性があるとも指摘している。

つまり、輸送分野の脱炭素をどう進めるかは、「どのエネルギーを使うか」だけでなく、「土地をどう使うか」という問題でもある。

まとめ

  • 世界の液体バイオ燃料生産は20年で約7倍に増加した
  • 生産の中心はアメリカ、ブラジル、EUである
  • 原料の90%以上は食用作物で、廃棄物由来は少数派
  • バイオ燃料の99%は道路輸送向けに使われている
  • EV時代でも、政策支援と航空需要期待によって生産拡大が続いている
  • バイオ燃料問題は、エネルギーだけでなく農地利用とも密接に関係している

```` oai_citation:0‡ourworldindata.org

元記事 https://ourworldindata.org/data-insights/global-biofuel-production-has-grown-sevenfold-in-the-last-20-years-despite-the-rise-of-electric-cars